さぁ、哲学の時間です。
待ってください!まだスマホのホームボタンを押すのは早いです。
哲学勉強中です。
哲学と聞くと、ちょっと難しそうだな・・・と思いますよね。
でもほんのわずかな、氷山の一角でも哲学を知ると価値観が変わるかもしれません。
今回はそんな哲学の面白さを伝えたいと思います。
難しい用語はなくスラスラ読めるので、どうぞ最後までお付き合いください。
哲学とは
自分が当たり前だと思っているすべてのこと、
自分の思考が自分の考えていることをどのように形作っているのかに気づくこと。
哲学はフィロソフィー(philosophy)
ギリシャ語で「知を愛する」という意味があります。
どう生きるべきか
どのようなものが存在し、その本質は何か
真の知識とは何か
推論の正しい原則とは何か
人間の思考の本質、宇宙の本質、そしてそれらの間のつながりについて考えます。
哲学を学ぶメリット

哲学を学んでも、生命の意味、宇宙の意味などすべてのものが分かるわけではありません。
就職に有利になることもありません。
「哲学を学ぶ」とは世界や人生に意味を見出し、自分自身が置かれている状況を理解することです。
この自分で選んだわけではない世界で、選択肢が多い日々の中で「自分自身」を見つけることはきっと大きな武器になると思います。
哲学の歴史

哲学という学問は、問いに対して自分なりの答えを形成するだけではありません。
哲学の重要な部分は過去の人たちが問いに対してどのように答えてきたのかを理解する、その歴史にあります。
哲学の思考は大きく4つの時代に分類することができます。
- 古代ギリシア・・・神話時代
- 中世・・・キリスト教時代
- 近代・・・「神」の問題
- 現代・・・自分自身とは
今回は古代を代表する哲学者5人を紹介します。
時代背景とともに紐解いていきましょう。
哲学の出発点
タレス(英:Thales of Miletus)
紀元前625年頃~547年頃

以下引用:Bing
「神様がハンマーを振り下ろすから雷ができる。」
当時は説明のつかない物事はこのような神話として語られ、信じられていました。
しかし、貿易が盛んになると今まで信じてきた神話が、他の地域や国ではまったく通用しなくなります。
そこで「〜とはなにか」という論理的な説明が必要とされました。
タレスは自然を対象に、その本質を論理的に描き出そうとし
「万物の根源は水である」と説きます。
これは誤りでしたが、合理的な考えで万物の根源を追求しようとしたことが「哲学の出発点」だといわれています。
絶対的な真理なんてない
プロタゴラス(英:Protagoras)
紀元前485年頃~410年頃

タレスが万物の根源は水であるといった以降、
「万物の根源は数である」(ピタゴラス)
「火である」(ヘラクレイトス)
「原子である」(デモクリトス)
と数々の哲学者がその真理をつきとめようとしました。
そこへ登場したのがプロタゴラス。
「人間は万物の尺度である」という言葉が有名ですが、
この言葉の意味は「人それぞれだよね」です。
たとえば、沖縄の人が冬の北海道に行って感じる寒さと、北欧の人が北海道に行って感じる寒さは違います。
あとは好みの異性のタイプも人によって違いますよね。
価値観は人によって違うから「絶対的に正しい真理はない」という考え方です。
現代人の感覚に近いのではないでしょうか。
「人それぞれだよね。」と言う人を、心が広いなぁなんて思っていませんか?
絶対的な真理を
ソクラテス(英:Socrates)
紀元前470年頃〜399年頃

文明が栄えていたアテネは、市民が参政権をもつ民主政治が行われていました。
プロタゴラスが説いた「人それぞれだよね」という考えは、なんでも白を黒に、黒を白にできてしまうことで政治家の論弁術に使われるようになります。
民衆に響きそうな言葉だけを並べる、上っ面だけの政治家。
物事を追求する気持ちもなく、政治家のうまい言葉に乗せられて投票してしまう市民。
この腐敗した政治と戦ったのが『哲学の父』といわれるソクラテスです。
ソクラテスが行ったことはとてもシンプルでした。
- 相手が知っていると思ってることを述べてもらう
- それに対して質問する
- もとの考えが間違っている(分かっていなかった)ことを気づかせる
ソクラテスと対話した多くの政治家は、最後は質問に答えられなくなり無知をさらけ出してしまいました。
この方法は現代でも「ソクラテス式問答法」として使われています。
現代で「幸せとはなにか?」「いい生活とはなんだ?」と質問攻めしてくるオジさんは間違いなく鬱陶しがられます。
あと、ソクラテスで有名なのは「無知の知」ですね。この言葉の意味には
知らないことを知って、絶対的な真理を追求しよう!
人それぞれだという相対的な考えを辞めよう
というソクラテスの意思が込められています。
ソクラテスは多くの人の心を動かしましたが『哲学思想で若者たちを堕落させた罪』で死刑宣告を受けます。そして刑務所の中で毒杯を仰ぎ亡くなりました。

引用:Bing
フランスの画家・ジャック=ルイ・ダヴィッドに描かれた「ソクラテスの死」
毒杯の飲む寸前の描写だといわれています。
とはいえ、ソクラテスでもその絶対真理を問われると「知らないから答えられない」となってしまいます。
ここでは「自分の頭で考えることを身に付ける」にとどまっているようです。
理想の真理とは
プラトン(英:Plato)
紀元前427年~347年

ソクラテスは論文や本を1つも書きませんでした。
私たちがソクラテスの功績を知れるのは、その弟子たちの著作によるものなのです。
その弟子の中でもプラトンはとくに文才があり対話篇というスタイルで執筆しています。
戯曲で書かれた登場人物の会話は生き生きとして、とても読みやすいです。
プラトンのおすすめの本を後ほど紹介しますね。
プラトンといえばイデア論です。
イデア論を分かりやすく理解する、三角形の話があります。

一見これは完璧な三角形と思えます。
しかし、ズームしてよく見ると凸凹しており直線の『理想の三角形』ではありません。

すべてのものは原子レベルまで拡大すると丸みを帯び、理想の三角形というのはこの世に存在しません。
なのに、どうして私たちは正確な三角形を見たことがないのに、理想の三角形を知っているのでしょうか?
これをプラトンは、イデアがあるからだと説きました。
イデアは不変の完璧な世界で、私たちが見ているこの現実は変化する『影』だといいます。
イデアは三角形や四角形のほかにも、愛、美、正義などがあります。
プラトンはこのイデアに近ければ近いほど優れた人間であるといい、優れた人間こそが王になって国を治めるべきとした国家論も説いています。
プラトンは理想とする国家を達成すべく、人材育成や後進の教育を行う学園「アカデメイア」を創設しました。
結局プラトンの理想国家は築けませんでしたが、アカデメイアは現在も大学などの教育研究機関をあらわす「アカデミー」として受け継がれています。
話は逸れますがこの頃は孔子とブッダも誕生しています。
ソクラテス | 紀元前470年〜399年 |
---|---|
プラトン | 紀元前427年~347年 |
孔子 | 紀元前479年〜551年 |
ブッダ | 紀元前500年〜600年の間 |
遠く離れた場所で幸福、自由、善良を求めた思想家が誕生し、神秘的な教えに出会ったのはとても興味深いですよね。
万学の祖の誕生
アリストテレス(英:Aristotle )紀元前384年〜322年

アリストテレスはプラトンが創設したアカデメイアの生徒でしたが、プラトンやソクラテスよりも経験主義的な考え方を持っており、イデア論を否定したことで知られています。
なぜならプラトンのイデア論に従うと、蝶をみたときに私たちはイデア界を仲介して、蝶だと認識していることになります。
アリストテレスはそれを「物事を2倍に増やしているだけだ」といい、それよりも現実にある実物の蝶の大きさや、羽の形などをみて蝶という存在を定義したほうがいいと考察しました。
そこでアリストテレスは存在を定義する方法として、四原因説(物事は4つの要因から成っている)を説きました。
ちょっと分かりづらいので、家を建てるときをイメージしてください。
- 質料因・・・材料(木材や石材)
- 形相因・・・設計図
- 起動因・・・行動(大工さん)
- 目的因・・・理由(住むため)

この4つの要因があって、物事は存在するといいます。
家を建てる場合は、まず住むという目的があって、材料が必要になります。それに大工さんもいないと家を建てることができません。
そして、この4つの中でもっとも重要な役割をするのが、設計図である形相因です。
形相因は、どの要因ともセットで考えることができ、設計図が無ければ行動は起こせません。
アリストテレスはこの形相因がイデアに変わるものだとしました。
これは自然界にも置き換えることができます。花にたとえると
- 質料因・・・種
- 形相因・・・遺伝子
- 起動因・・・虫・風
- 目的因・・・存在すること

こうすると、この世界のすべてのものは理由があって存在している。
という考えに至ります。
アリストテレスが「万物の祖」と言われる訳は、
やや現実離れしたイデア論が支持されていた時に「現実の存在をしっかり観察しよう」と、流れを軌道修正したこと。
経験的なものをすべて積み重ねながら学問を作る、哲学思考のスタイルが現在の生物学、分類学、天文学、倫理学、政治学などの基礎を作ったことにあります。
もし「これを知るには、まずこのイデアを知って・・・」なんてことを続けていたらどうなっていたでしょうか?
プラトンとアリストテレスを象徴する有名な絵画があります。

イタリアの画家・ラファエロの「アテネの学童」 引用:Bing
中央にいる二人がプラトンとアリストテレスです。

プラトンの哲学は抽象的だったので天を指しています。
一方、アリストテレスは自然哲学だったので手を地上に向けています。
(ちなみにプラトンはレオナルド・ダ・ヴィンチがモデルだそう。たしかに似てますね)
哲学入門におすすめ本

最後に、哲学を知るのにおすすめの本5冊を紹介します。
史上最強の哲学入門
最初の一冊におすすめ!
この表紙をみてテンションが上がったのは私だけではないはず。
ご存知、少年漫画『バキ』です。
あのバトルを哲学者に置き換える発想が素晴らしく、迷う事なく手にとりました(笑)
まず、構成が分かりやすいです。
31人の哲学者を以下の4つの項目に分けて紹介しています。
- 真理の『真理』
- 国家の『真理』
- 神様の『真理』
- 存在の『真理』
そして著者である飲茶さんのユーモア溢れる文章が読んでいて面白いのも魅力。
楽しく、1人1人の哲学者の思考を理解することができるので、哲学に興味をもったらまずはこれ!!と強くおすすめできる本です。
教養として学んでおきたい哲学
哲学ってなんなの?から教えてくれる一冊
この本は私たちが哲学に対して抱く、根本的な疑問に答えてくれるところから始まります。
例えば、
・そもそも哲学とはどんなことをするのか
・大学に行って学ぶ哲学とは
・哲学者と哲学研究者の違いとは
「そうだったんだぁ」と理解を深めながら読み進めることができます。
哲学の歴史2500年をコンパクトにまとめながら、現代の問題にも繋がる話もあって
「教養」も身に付きます。
しかも本の最後には、私たちのステップアップのために、著者がおすすめの哲学書を20冊も紹介してくれています。
この本をきっかけにすればさらに知への探検が広がっていくでしょう。
自分の頭で考えたい人の15分間哲学教室
15分で”気づき”を与えてくれる一冊
哲学を教える本は世の中にあふれている。そういった本の七八・四パーセントは読みはじめてすぐに眠くなる強烈な睡眠導入剤が含まれている。その他の二一・五パーセントは著者が自分の博学さと頭脳の優秀さをひけらかす宣伝材料となっている。本書は、残りの〇・一パーセントに含まれる良質な本となっている。
序文:自分の頭で考えたい人のための15分間哲学教室アン・ルーニー
こう言われたら読みたくなってしまいます。
タイトル通りどこから読み始めても大丈夫で、15分ほどで読める構成になっています。
27章もありとても厚い内容ですが、各章のタイトルを読んだだけでも気になってしまうものばかりです。
「人類はAIを恐るべきか」
「森の中で倒れた木は存在するか」
「犬には魂があるのか」
個人的には14章の –言葉とは?−の「言語の限界」に興味をひかれました。
「怒り」や「愛」がもつ意味は、あなたと私は同じではないかもしれない。
この言葉の真理を追求しようとすると「言葉」によって伝える手段を失ってしまい、哲学者ですらも挫折してしまうというもの。
プラトン著作のおすすめ2冊
プラトンの著作は2000年以上前に書かれたとは思えないほど読みやすく、ストーリー仕立てになっていて面白いです!
プロタゴラスーあるソフィストとの対話
30代の若きソクラテスが、ソフィストの重鎮プロタゴラスを相手に大胆に議論を戦わせるバトルストーリー。
プロタゴラスは「人それぞれだよね」でお馴染みですね。
「ソフィスト」とは
弁論をおこなうための知識や技術を教えて報酬をもらう人。
現代でいうと教師や講師のような存在です。
ソクラテスは授業料をもらって徳や知識を教えるソフィストの存在を批判しています。
プロタゴラスの弁論術に四苦八苦しながらも、鋭い疑問で切り返すソクラテスは必見です。
メノン 徳について (光文社古典新訳文庫)
弁論術に励むメノンという青年がソクラテスに「徳は教えられるか?」を問うところから始まります。
ちょっと図々しくもみられるメノンの質問のおかげで、ソクラテスの考察・対話術が垣間みれます。
前書きでは時代背景など、本文における疑問点などを翻訳者の渡辺邦夫さんが解説しているので初めてプラトンの本に触れる人でもストレスなく読めますよ。
やさしい哲学。古代編
今日からあなたも哲学者・・・は少し大袈裟かもしれませんが、
真理を知りたいと思う探究心、追求心こそが哲学だと思います。
これをきっかけに哲学を好きになってくれたら嬉しいです。
中世哲学編はこちら

最後まで読んでいただきありがとうございました!